- 遠くがよく見えるわけではありません
- 正視の人よりも余分に調節力を使います
- なので疲れるけれど見えないことはないです
- しかし強い遠視になると近くはおろか遠くさえ見えない人もいます
もくじ
遠視の状態
近視が「眼軸が長い人」「眼の大きい人」なら、遠視は「眼軸が短い人」「眼が小さい人」と言えます。
(眼軸:眼の奥行き、前から後ろまでの長さのこと)
1mm短くなると、+3.00Dに相当すると言われています。
遠視の人の眼は、水晶体を完全に脱力させた最も薄い状態(=最も遠くに焦点を合わせた状態)にすると、なんと眼底の網膜を通り過ぎてしまいます。完全に脱力してしまうと、すべての距離がボヤけて見えないのです。
↑ 正視の人は眼底にぴったり合うのに対して、
↓ 遠視の人は通り過ぎてはみ出てしまっています。
調節ゼロにするとボヤけてしまう遠視の人
しかし近視の人と決定的に違う点は、水晶体は厚い方になら自分で調節ができますので、焦点の位置を少し手前に引っ張ることができます。
遠くを見る時にも少し眼の調節をし、近くを見る時にはもっと調節をすることで、見ること自体は叶うことが多いです。
遠視の人は常に人よりも余分に調節が必要
遠視のレンズ
遠視の人の眼は、ディオプトリーとしてはマイナスの状態になっているので、プラスのレンズで相殺して±0近くにすれば、調節力不要で遠くが見えるようになります。
プラスレンズは虫眼鏡と同様、中心が厚くなるレンズです。
プラスレンズは中心部が厚い
プラスレンズは光を収束させ、一点に集めることができます。(虫眼鏡で紙が焦がせますね)
プラスレンズは度が強ければ強い程、中心部が厚くなっていきます。
プラスレンズは逆に言えば「端が最も薄くてよい」わけですが、もし既製の丸レンズからカットする場合、既製レンズ径に対してフレーム径が小さい程、端の厚みが余分になってしまいます。
(必要なカーブが確保できれば厚みそのものは不要になる)
「プラスメッツ加工」(有料の場合が多く、+2,000円~3,000円程度)
よって、プラスレンズの人には「プラスメッツ加工」という、よりレンズを薄くする加工というものがあります。図のように、余分な赤斜線部分をカットしたサイズで作るという加工です。
値段ははお店によることと、フレームのサイズや度数によっては大きく違いがみられない場合があります。選んだフレームのサイズが小さければ小さい程有用です。
遠視は「よく見える人?」
遠視の問題点は、「見えるけれども、いつも大なり小なり調節力を使うので疲れてやすい」ということになります。
しかしそれも「調節力があるうちは見ることができる」というだけで、強い遠視であればあるほど、歳を取るごとに見るのが辛く、見えなくなっていきます。
遠視の人は決して遠くがよく見えるわけではない所が、大きな誤解です。
遠視・近視・正視という眼の屈折の問題と、「眼がよく見える」というパフォーマンスの問題は、まったく別のものなのです。
隠れ遠視?
遠視の人は意外と発見されにくいです。特に軽度となると、若ければ若い程実生活に問題は出ません。
年を取ってからメガネが必要になり、眼科やメガネ屋さんに行ってみたら「+0.50~+1.00くらいの遠視です」と言われる人が結構います。
ちょっとだけ遠視だったことに気付かなかった、それ自体はまったく問題ありません。
昔だと、授業中に落ち着きが無い子、集中力に欠ける子は問題視されていたと思いますが、その多くが「遠視だったのでは」と言われています。
遠視である為に、ずっと集中して教科書を見たり黒板を見たりということがし辛く、しんどくなってしまう為ですね。
最近は眼科検診等で見落とされることも少ないようです。
子供の遠視
多くの子供は遠視傾向ではないかと言われています。
医学的には完全にわかっていないようですが、身体の成長に伴って眼の大きさも成長し、正視に近づいていくということがこれまでの定説でした。
実際、子供の頃は遠視でメガネを掛けていたが、大人になったら要らなくなったという人は結構な数います。
しかし、最近の眼軸延長の抑制トライアル考察、そして眼球全体だけでなく水晶体もサイズ的に成長する(12歳頃に完成するのではと言われている)ことから、単に「サイズ不一致を成長期に整えているだけ」で、それが結果的には「成長して解消されたかのように見える」というだけような気もしています。(※ これは素人の個人的な想像です)
成長期の眼は可変(サイズが変えられる)で、15~16歳くらいで落ち着くと考えられています(ただし小さくはならない)。
つまりその時期までに、身体や環境に応じて眼のサイズを整えるということだと思います。
子供の強い遠視の場合はとにかく早期発見が原則です。
常に集中していないと見ることができないということも問題ですが、それ以上にできるだけ早く「見え方」を確保してあげることが重要です。
子供は、幼少期3歳頃にはもう「眼の使い方」を体得していきます。立体感、距離感、眼からの映像情報と脳を連携させるとても重要な時期です。
その間に見えない状態のままであれば、将来的には弱視になる可能性が出てきます。
また幼い頃には問題なく見えていたとしても、その後視力が落ちたまま放置していると、眼そのものが上手く使えない状態になっていくことがあります。
また、眼が小さく生まれるという障害もあります。
ピアニストの辻井伸行さんは「小眼球症」という染色体欠損の障害で有名です。
眼が上手く形成されず、とてもとても強い遠視のような状態で、軽ければ弱視、場合によっては網膜の形成も上手くいっていないことがあるようです。
遠視と老眼
もうお分かりかもしれませんが、遠視傾向の人ほど「老眼に気付くのが早い」です。
「眼が良かったせいか老眼が早くきた」という人がたまにいますが、実際には「ごく軽度の遠視に気付いていなかっただけ」の可能性が高いです。
例えば「自分では視力が良いと思っている」という、同い年の弱近視(-0.50)の人と、弱遠視の人(+0.50)の人がいたとして、この二人には1.00の差があります。
既成の老眼鏡はだいたい+1.00くらいからありますが、同い年でありながら一番弱い老眼鏡と同じくらいの差があるということですね。
この差はきっと「早くも老眼が来た」と体感するくらいになると思います。