どうしても作れないメガネがある

 日本のメガネ率は50%とも60%とも言われています。
 日本・アジアには近視が多く、欧米では遠視人口の方が多いというような話は聞いたことがあります。

 そして眼がいい人も、人間歳をとれば老眼が進み、裸眼のままでは手もとの文字が読めなくなる日が必ず来ます。

 つまりメガネとは、一生のうち必ずどこかで皆がお世話にならなければいけないアイテムと言えます。

 さてそんなメガネなのですが、条件的にどうしても作れない…作らない方が良いという話ではなく、作ることができないという場合が無くもありません。今日はそんなお話です。

度数がない

 そもそも製作できる度数の範囲を超えている……という場合が、極稀にあります。

 そういう場合は、作れる範囲の度数で妥協する。その度数の視力で納得するしかありません。

 レンズメーカーさんの度数製作範囲は、そのレンズの種類によって違います。
 メーカー、レーベル、屈折率、設計により変わるので、扱っているメガネ屋さんで確認するしかありません。また、メガネ屋さんはそれぞれ販売されているレンズすべてを取り扱っているというわけではないのです。

 一般的には単焦点のマイナスレンズだと、よほど広くて-20.00くらいまで。遠近累進レンズになると範囲はやや狭くなります。
 種類によりますが、屈折率が高ければ製作範囲が広いとは限りません。
 乱視度数は-4.00~-5.00くらいまで、種類によって-6.00まである場合もありますが、種類によっては更に狭くなります。オーバー手配と言って、範囲外度数を別料金にて注文できる場合もあります。

 プラスレンズの方が値としては狭く、+8.00までならなんとか、+10.00も作っているレンズはある、+10.00を超えると選択肢がほとんどなくなる、という感じです。

 プラス度数はちょっと特殊で、+10.00を超えてくると、中心部分のみ正確な度数を形成してあとは滑らかに周辺を広げたような、丁度目玉焼きのようなレンズとして製作します。そうしないと、強度数のプラスレンズはものすごく全体が出っ張ったすんごい分厚いレンズになってしまうのです。
 その為、強度の遠視の場合、選択肢がそれ専用の種類(シームレス)になってしまいます。

特殊レンズだと更に度数がない

 普通のメガネレンズだと製作範囲内で大丈夫という度数でも、特殊なレンズになると話は変わってきます。

 例えば……

・ブルーライトカット等のコート付加
・強いカーブ付きのレンズ
・偏光レンズ
・調光レンズ
・耐熱レンズ
・前述で更に累進(遠近)レンズ

 特殊レンズの更に累進となると、もっと範囲が狭くなる傾向にあり、どうしても作れる範囲が限られていきます。

レンズ径が足りない

 オーダーメイドレンズにしない限り、基本的にレンズは「まん丸のレンズとして仕上がったもの」を削ってフレームにはめ込みます。

 このまん丸のレンズ径というのは各社仕様で決まっていて、必要なサイズがそれを超えてしまうと「スキマ」が出来る為、メガネとして製作できません。(ひょっとしたらちょっとくらい隙間が空いてもイイヨと言うお客さんは居るかもわかりませんが…)

 一般的なまん丸レンズの径は、65~80mmくらい。
 プラスレンズの方が、径が小さい傾向にあります。
 その為近視の人は「径が足りない」という場面にはまず遭遇しませんが、遠視の人老眼鏡作成の人には比較的ぶち当たりやすい問題です。

 まん丸レンズの光学中心はだいたい中央にあり、使う人の黒目に必ずこの光学中心が当たるようにします。
 しかし、フレームの幅≦レンズ径であれば問題ない、ということではありません。眼と眼の間の距離が、フレームの中心間よりも狭い人の場合、逆に広い人の場合(あまり居ませんが…)真ん中からズレて眼の位置が来ます。

・プラスレンズでレンズ幅の広いフレームを選ぶ場合
・ものすごく眼と眼の間の距離が狭い場合
・サングラスフレームに度入りカーブレンズ

 など、径足らずになるケースは複数考えられます。

カーブが合わない

 メガネフレームの形状とメガネレンズの形状というのは、なんでも良いように見えて実際には結構シビアです。

 フレームのフロントは、大抵の場合全体に少しカーブが付いています。
 レンズの入るリム部分にも、カーブが付いています。

 カーブが強いデザインもあります。カーブが強く付くと顔に添いカッコイイ感じになります。レンズ径が大きくなればカバー力も上がります(サングラスがそうですね)。

 店頭に並んでいるサングラスを上から見てみて下さい。
 フレーム全体もカーブになっていますが、レンズそのものにもカーブが付いて少し出っ張ったように見えると思います。これが「レンズカーブ」です。

 今現在のチェーン店ではどの店舗でもスムーズに加工ができるよう、通常のレンズカーブで作製が可能なフレームを選んで仕入れられていると思いますので、一般のメガネの場合には特に問題にならないと思います

 カーブ差が問題になるのは多くの場合、サングラスフレームをレンズを入れる場合持ち込みのフレームにカーブが強く付いている場合だと思われます。

 あるいは、ちょっとトガったデザインのメガネブランドを置くセレクトショップさんなどでは、余分にそのような説明がされるかもしれません。

初めてのメガネなのに度が強い

 極稀に、結構な近視の人なのに「メガネを掛けるのが嫌だから」と、ずっと裸眼で生活を送っていた人が現れます。年に数人は遭遇するでしょうか。

 そういう人は、場合によってはメガネを掛けても視力がでないことさえありますし、視力が出たとしてもいきなり掛けていられない度数からのスタートになりますから、慣れるまでがものすごくしんどいです。

 そういう人には相当弱い度数からのスタートにして、ちょっとずつ慣れて度数を上げて行く……ということしかできません。

 meganeccoが過去に見た「メガネ初めてさん」の一番強い度数は、-7.25でした。お子さんでしたが、そこまで裸眼で過ごせたことが驚きです(どうやらお母さんが「メガネが似合わない」と言い続けていた模様…お子さんが本当に可哀そう)。

フレームが合っていない

 フレームの選び方のページで色々書いてはいるのですが、店頭という現場にいると、やっぱり「どうしてもこれがいい」と譲らないお客さんが現れます。
 見た目だったりとか、金額的な問題だったりとか。
 この場合「どうしても作れない」とまでは言いませんが、折角作ったのに(掛けられないことは無いが)失敗した!となってしまいます。

 見た目の問題は最終的に買う人の好みになるので店員もつべこべ言いませんが、「合っていない」というのはサイズ的な、あるいは形状的な問題です。

「あなたのお鼻だとズリ落ちる可能性が……」
「耳後ろの長さが足りていないのでズリ落ちる可能性が……」
「横幅が狭過ぎるので……」
「横幅が広過ぎるので……」
「レンズ径が足りないのでズラさないと作れない……」
「無理矢理作ると変形してしまう……」

 メガネ屋店員の存在意義は、半分くらいはそういう「セレクションフィッティング」の為に存在すると言っても過言ではないです。
 お手頃チェーン店ではお客さんが選んだ物に何も言わない所もあるので、気になる方は「このサイズで大丈夫ですか?」と一言尋ねられると良いと思います。

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