メガネはメガネ屋さんに行けば作ってもらえます。
メガネを掛けない人は意外と知らない人がいるのですが、メガネ屋さんはただメガネフレームを売っているだけではないのです。
もくじ
メガネ屋さんでの声の掛け方
基本的には服屋さんと同じ感覚で大丈夫です。
もちろん気に入るフレームがなければお店を出ても大丈夫です。
いわゆる「路面店」(ショッピングモールの中ではない、街中に独立して構えているお店のこと)だと、一度入ったら出辛い感じもありますが、そこは正直に「あまりピンとくるフレームがなかったのでまた来ます」と言えば大丈夫です。
- まずは店内のフレームをじっくり選ぶ
- フレームを選ぶ前に検査(検眼)を促されたら基本的には断った方がよい
- 気に入るフレームが見つかったら「これでメガネを作りたいです」と声を掛ける
メガネ屋さんに入店したら、まずはどんなメガネがあるかグルっと見てみましょう。
お店のタイプによって、最初の回遊で店員さんが積極的に声を掛けてくれる所と、店員さんは基本待機状態で声を掛けてこない所とがあります。
(基本的に値段が高いお店ほど店員さんがすぐに付いてくれます)
声を掛けてこないお店は気軽に入れますが、逆に積極的に声を掛けてくるお店は「声を掛けられたりしたらここで買わなければならない」と思ってしまうかもしれません。
特に「先に検眼(検査)しましょうか」と言われてしまうと、「検査をしてしまったらもうこのお店で買わないといけない」と気を使ってしまいがちなので、私はどちらかというと「フレームを先に選びたい」という意思表示をすることをオススメしています。
(逆に言うと検眼を先に促して販売を狙うお店もあります)
ただし、その商品に設定されているレンズでは度数が無いかもしれない、眼病や異常により度数が測れないような眼かもしれない、という場合もあります。
そのように作ることができない可能性も考えて、選ぶより先に検眼を勧められる場面もありますので、その場合には先に検眼を受ける方がいいでしょう。
その為、一生懸命選んだフレームでメガネが作れない可能性もあるということを覚えておいてください。
メガネ屋さんでの流れ
メガネ屋さんに行ったらすることは、
- フレームを選ぶ
- 入れるレンズの度数を決める
- レンズの種類を選ぶ
大きくこの3つになります。
逆にメガネ屋さんにしてもらうことは、
- そのフレームが顔に合っているか見てもらう(セレクションフィッティング)
- レンズ度数の為の検査(処方箋ならスキップ)
- メガネの形状調整(プレフィッティング・ファイナルフィッティング)
大きくこの3つになります。
フレームを選ぶ
メガネ屋さんに沢山のメガネフレームが並んでいるのには、理由があります。
デザイン
デザインなんかなんでも良いと言うのなら、ひとつのデザインだけであとはサイズ展開をすれば済む話です。
まず第一に「ファッションとして重要」だから、たくさんの色々なデザインのフレームが用意されているのです。
掛け心地
もうひとつは「掛けやすさ」です。
「金属のフレーム」ひとつ取っても素材は様々で、軽くてしなやかで強度の高い素材ほど金額が上がる傾向にあります。
プラスチックフレームにも色々あり、昔ながらの定番「アセテート(アセチ)」や「ウルテム」「TR-90」などで、それぞれ特性と値段が違います。
サイズ展開
そして何より「サイズ」です。
といっても、メガネフレームはひとつのデザインでそこまで細かく展開されることは少なく、せいぜい2サイズ展開程度。多くはワンサイズ展開です。
入れるレンズの度数を決める
メガネにはもちろん、レンズが入ります。
それぞれの視力に合わせた「度数」のレンズを、左右それぞれに入れて作ります。
ですので、メガネ屋さん店頭のメガネフレームには、基本的にレンズは入っていません。入っているのはただのプラスチック板で、ダミーレンズと呼ばれます。
レンズの度数決定は、3つの方法があります。
- メガネ屋さんの店頭で検査をしてもらう
- 眼科に行って検査をしてもらい、処方箋を書いてもらう
- 今のメガネと同じ度数にしてもらう
1)メガネ屋さんの検査
メガネ屋さんの店頭には、一通り視力などの検査ができるだけの設備が備わっています。検査費用はメガネの代金に含まれていますので、検査代を別途払う必要はありません。
(オプションで更に詳しい検査をしてもらえるメガネ屋さんもあります)
検査にはある程度の技術が必要です。
店員さんの中には、上手な人、下手な人があり、上手な人に当たるにはやっぱり運も必要です。
しかし逆に、メガネが必要な人の中には、とても測りにくい人と、とても測りやすい人がいます。
とても難しい目をしている人と、単純なわかりやすい眼の人ということです。
また本人の反応によっても左右されます。(意思表示がはっきりしない、見え方の違いに気付きにくい等)
よって、どんなお店に行ってもほとんど変わらない度数になる人もいれば、行く先々で全然違う度数にされる人もいます。
ですので、単純に度数の決定を、店側の上手い下手で分けることは難しいのです。
ひとつ言えるのは、メガネの金額が高いお店程、技術についてがしっかりしているということ。
JINSなどの新規の低価格メガネ屋さんは、ひどい話ですが業界では「雑貨屋」という蔑称的な名前で呼ばれています。
低価格のメガネ屋さんは、コストを抑えるために検眼を可能な限り簡単にしている傾向にはあるようです。
今の度数で困っていないと言われれば、必ずそのままで検査なしでの作製にしますし、触らなくていい、入れなくても済みそうな部分はできるだけ省きます。
オートレフと呼ばれる、眼科にもある「眼の屈折状態を撮影する検査機械」があるのですが、その機械が出す値の、ほぼそのままで度数を決めてしまうようなお店もあります。
そういう決定で平気な人と、平気ではない人がいますので、どちらが良いとか悪いとかは言えないのです。
わかりやすい眼の人にとっては、お手軽な価格で充分満足となるだろうし、わかりにくい難しい眼の人にとっては、安いお店では無茶苦茶なメガネしかできなかった、となるかもしれません。
自分の眼と上手に付き合うためにも、自分に合うお店を見つけることが大切です。
2)眼科の検査
眼科で処方箋を書いてもらい、それを持ってメガネ屋さんで作ってもらうことも可能です。
遠視のお子様の場合には、まずメガネ屋さん店頭では測れませんので、必ず処方箋が必要になります。
この場合のメリットは、
- 信頼できる眼科の先生であれば安心
- 処方箋を持っていけば、店頭での検査に時間を取られない
デメリットは、
- 処方箋自体にお金が掛かる(初診料含めて ~2,000円くらい)
- 眼科の先生だからと言ってメガネ処方が上手というわけではない
眼科の先生は、眼の病気について日々治療・勉強されていらっしゃいますので、メガネ処方というのは多くある仕事のうちのひとつに過ぎません。
単純にこなした数だけなら、メガネ屋さんの方が圧倒的に多く経験豊富でしょう。
また一部の眼科の先生は、メガネそのものにはそこまで詳しくないという部分もあります。
中にはプリズム検査ができない先生もいたり、とにかく近視は低矯正(あえてユルい見え方にすること)が今も正しいとする先生もいます。
もしくは先生が度数を決定せず、慣れた看護師さんが決定をする医院もあります。
眼科の先生は、「よく見えるメガネ」「眼のためのメガネ」を作る為に処方箋を書きます。それと「使いやすいメガネ」「見やすいメガネ」は、同じようで少し違うのです。
3)今のメガネと同じ度数
今のメガネでよく見えており、生活に一切問題がないという場合には、これが最も早いです。
念のため、今のメガネでの視力検査をされると尚良いと思います。親切なメガネ屋さんなら聞いてもらえると思います。
元の度数のことを「KB」「旧度」と言います。
レンズの度数を見る機械(レンズメーター)がありますので、メガネそのものがあれば度数はわかります。
ただし、レンズ一面に傷が付いていて、傷のせいで視界が悪過ぎるというようなひどい状態の場合には、メーターでも見辛いことがありますので、あれば作った時のレンズ袋や伝票などを持参するといいでしょう。
「今のメガネより少し見やすく」「今のメガネはちょっとしんどいので少し変えて」という要求の仕方では、漠然とし過ぎているので度数の決定はできません。
「左右ひとつずつ上げたんでいい、検査は要らない」とまで言い切ってしまえば一応作ってはもらえるかもしれませんが、そういう場合には「お客さんの任意の度数」として扱われますので、度が合わなかった時の保証が受けられません。
レンズの種類を選ぶ
レンズの分類はだいたい以下のようになっています
屈折率による違い
レンズ素材の現在の主流はプラスチックで、一部では根強いガラスレンズファンもいます。
それぞれに「屈折率」があり、これが高いほどより光を曲げられるので、少ない厚みで同じ度数が得られるようになります。
プラスチックレンズ屈折率:1.50~1.76
ガラスレンズ屈折率:1.52~1.90
ちなみに普通の水:1.333
基本的に屈折率の高いレンズの方がコストも高く、販売価格も高くなる傾向にあります。
プラスチックレンズ1.50のような低い方の屈折率のレンズは、旧世代のレンズとも言えます。
ただし、屈折率が高い方が品質が良いとは言えません。
屈折率が高いほど透明度は下がり、収差が増え、素材自体が硬くなっていくので衝撃に弱くなると言えます。プラスチックレンズで最もバランスが良くキレイに見えるのが屈折率1.60なので、度の弱い人がそれ以上の屈折率を選ぶメリットはありません。
設計による違い
球面レンズ、非球面レンズ、両面非球面レンズとでまず値段が違います。
球面レンズ(安) < (外面)非球面レンズ < 両面非球面レンズ(高)
非球面レンズは外面のみを非球面設計にしたレンズと、表も裏も非球面設計にしたレンズとで値段が変わります。(内側だけもありますが割愛)
両面非球面の方が高くなりますが、その分見えやすい良いレンズと言えます。度の強い方、乱視の強い方にオススメです。
(片面)非球面と両面非球面では、厚みそのものはそこまで変わらない傾向にあり、軽度によっては両面非球面の方が厚くなる場合もあります。
「レンズが付いています」とうたっているお店では、安いと「屈折率1.55の球面レンズ」「屈折率1.50の非球面レンズ」など、少し高いと「屈折率1.60の外面非球面レンズ」が付いていることが多いです。
見えやすいと書いていますが、設計の新旧が必ずしも自分にとって見えやすい、見えにくいに繋がるわけではありません。中には球面レンズをずっと使っているので球面レンズの方が見やすいという人もいますし、最初から球面レンズがしんどいと感じる人もいます。
より良いものとして、フレーム・度数に合わせたオーダー・セミオーダーレンズもあり、そちらの方がもっと割高になります。
単焦点と多焦点
いわゆる「遠近両用レンズ」とそうでないレンズの分類です。
若い方には遠近両用レンズはほぼ無用だと思われますが、若い人向けに「リラックスレンズ」と言われる、ユルい遠近両用のようなレンズもあります。(最近はスマートホン向けと謳われています)
各種レンズコーティング
最近のレンズは、旧世代大量生産の球面レンズを除いて、大抵は「99%紫外線カット」「ハードマルチコート」が付いています。
ブルーライトカットコート
有効性の是非はありますが、青色光波長を一定量カットすることは間違いなく、そのカット幅については製品により違い、値段も変わってきます。
仕様によりレンズ色がごく薄く青色に見えるもの(ブルーミング)、茶系黄色系に見えるものがあります。
光の三原色(RGB)のB(ブルー)をカットする為、全体的にはほんの少し黄色味がかった景色に見えます。
傷防止コート
一切傷が付かなくなることを保証するものではありませんが、ごく細かなコート傷は明確に減らすことができます。
表面のコートそのものの強さと、摩擦係数を減らすことで傷を回避します。
カラーレンズ
店頭にサンプルが置いてあり、その中から色を選んでレンズに着色することもできます。
これによりメガネフレームに濃い色のレンズを入れて安価に度入りサングラスを作ることもできます。
フレームが合うか見てもらう
ここからは店員さんに任せる部分です。
最初から着いて見てくれるお店と、客が決定するまで特に何も言わないお店とありますが、最終的に選ぶフレームが目的や顔の大きさに合うかどうか、必ず見てもらいます(似合うかどうかの見た目の話は別です)。
ちゃんとしたお店であれば大抵は買いたい旨を伝えると、
「そのフレームはお顔サイズに合っていないので……」
「そちらだとこういう問題点がありますので……」
と教えてもらえますが、安い価格のお店だと基本的に口出しせずお客さんの選択のままということが多いです。
そういうお店の場合、折角買ってもとてもズレてくるメガネになったり使い辛いメガネになることがあります。
顔や目的に合っているフレームを選ぶことを「セレクションフィッティング」と言います。メガネ作りは、フレーム選びからもう始まっているのです。
メガネの形状調整
メガネフレームは個々の品質に加え、最終的にその人の顔の形に合わせて形状の調整をすることで掛け心地が確保されます。
この形状の調整を「フィッティング」または単純に「調整」と呼びます。
フィッティングは、メガネ屋さんの技術の中では、検眼に次いで難しい工程になります。
クオリティの低いフレームほどフィッティングが難しい、あるいはそもそも快適な掛け心地にできないという傾向にあります。
フィッティングを行うタイミングは、
買上が決定したタイミング(プレフィッティング)
↓
場合によってアイポイント(黒目の位置)確認
↓
レンズを入れた完成後(ファイナルフィッティング)
プレフィッティング作業はとても重要な工程ですが、単焦点レンズの場合にはそこまでシビアではないこと、丁寧に調整をしても本人の癖によってはかなり前後する場合もあることから、時間短縮の為ファイナルフィッティングのみのお店も多いです。
アイポイント確認は、特に累進レンズになると眼の位置によって見え方がとても前後する為、丁寧に取られる場合が多いです。
単焦点の場合には同じくそこまでシビアではないので、スキップされるお店も多いです。
メガネの出来あがり
今の時代は、大抵のメガネ屋さん店頭にはレンズをある程度自動で削る機械が置かれていますので、即日お渡しを謳うお店も多くなりました。
ですが即日が叶う条件は、メガネ屋さんによって・フレームによって異なります。
レンズがそのお店にある
そのお店が在庫として持っている度数の範囲であれば、即日加工が可能です。
在庫の範囲設定はメガネ屋さんによって異なり、平時は高屈折率レンズを置いていないお店、乱視-1.00以上は置いていないお店、近視-10.00までなら置いているお店などなど、様々です。
その為「今日受け取れますか?」というだけの問い合わせでは、各メガネ屋さんも「度数によります」としか答えられないのです。
フレームが特殊ではない
フレームの中には、そもそも店頭で加工ができない(もしくはできる技術者が今はいない)場合もあります。
例えば「ツーポイント」と言われる、レンズに穴を開けてネジ等でフレームを止めているリム無しのフレームを、その場で加工するお店というのも少なくなりました。
自社で加工専門の技術者を持っているメガネ屋さんや、加工専門の業者もあり、難しいものはそちらに一任しているお店もあります。
レンズに特殊加工が必要
度の強いプラスレンズを薄くする加工「プラスメッツ・薄型加工」はレンズメーカーによる加工が必要ですし、レンズを染色する場合も、今は基本レンズメーカーによる染色がほとんどなので日数が必要です。
(店舗により1週間前後)
必要日数はメーカーによる
レンズメーカー各社は、「いつも在庫として作って置いているレンズ(在庫レンズ)」と、「受注してから作って送り出すレンズ」とがあり、在庫レンズの場合には即日発送の翌日に届けられます。
(ただし大手メガネ屋さんの場合には流通コスト削減の為に本社経由で各店舗に送られる為、数日掛かります)
受注後作成のオーダーレンズの場合には、メーカーにもよりますが一週間程度、特殊レンズになると2~3週間程度が目安です。