メガネ屋さんの価格システム

 メガネの価格設定は、現在もとてもややこしいです。

 ややこしくする理由の一つは、フレームのクオリティの違いと、レンズの種類・クオリティの違いによる組み合わせが、数多にある為です。

 そのわかりにくさの為に、昔からのmeganeccoの皆さんは「メガネ屋さんに行く時には表示金額プラス数万円を覚悟してお金を持って行く」のが当たり前でしたし、お店に入れば「レンズ代はいくらくらい?」と聞きました。

 最近は、それを払拭してシンプルに、安心して買ってもらえるようにと「わかりやすさ重視」での「レンズ付きプライス」店舗が多くなりました。

 もちろん昔ながらの「フレームとレンズが別々のセパレートタイプ」のメガネ屋さんもあります。

 その違いについて書いていきたいと思います。

価格システムの大別

 大別すると、

A)最初の「標準レンズ」が付いていて、それ以上になると追加料金が必要なシステム
B)1.60~1.74非球面レンズを度数等に合わせて選択でき、両面非球面や遠近等で追加料金が必要なシステム
C)フレームとレンズが完全に別料金の昔ながらのシステム

 という分類ができます。

A)「標準レンズ」タイプ

「標準レンズシステム」は、最低保証があるだけで基本的にはセパレートシステムとあまり変わりません。

 「標準レンズ」に選定されているレンズは、お店によりますが

屈折率1.50~1.60球面レンズ(zoff、ALOOKなど)
屈折率1.50~1.55非球面レンズ
屈折率1.60非球面レンズ(パリミキなど)

 このあたりです。標準で屈折率1.67以上を付けることには意味が無いのでありません。下になるほど基本的な価格が少し高めになっていると思います。

 買う側にとっての標準レンズシステムのメリットは、「最低限は表示上の価格で眼鏡が作れる所」だと思います。
 度が強かったりする場合には、それを欲しい人がお金を出せばいいというシステムですから、コストの掛かる人からコスト通りに回収するという価格設定ですね。 

 お店側のデメリットとしては、付加価値(ブルーライトカットや傷防止コートというような見え方以外の価値)とは別に、いちいち厚みの説明をして屈折率選定をお客側にさせなければいけない(=支払金額を上げさせなければいけない)所です。
 昔はそれが当たり前だったとはいえ、店員さんももちろん人間ですから、良い人ほど心苦しく思いながらセールスをしている場合も多いです。

B)「薄型でも追加料金なし」タイプ

 「薄型レンズも追加料金不要」というタイプのメガネ屋さんです。
 とてもわかりやすく、ユーザーに優しいような感じがします。

 お店によっては「遠近レンズでは追加料金」「遠近レンズでも追加料金なし」などの違いがあります。

 またお店によっては違うレンズにも変更できる所もあります。
 「両面非球面には追加料金」「より良い設計のレンズ」「フルオーダーレンズ」というような選択肢もあります。

 このタイプの価格設定は、ユーザーにとってのメリットが分かれます。
 つまり、いくら安くなったとはいえ現状のレンズ仕入価格でも、非球面「1.60」「1.67」「1.74」では仕入値に差が生じます。

 メガネ屋さん側にとっては、レンズ価格が低い方(屈折率が低い方)が利益率は上がりますし、逆はもちろん利益率が下がります。
 価格設定にもよりますが、同価格で屈折率を問わずレンズが選べるということは、「弱度数の人ほど割を食っている」とも言えますし、「強度数の人ほど得をしている」とも言えます
 (この先レンズ価格が更に下がれば平坦に近づいていくでしょうけれど…)

 実際にAタイプのメガネ屋さんと比べて高くなるか安くなるかは、その店舗の価格設定によりますが、概ね「度の強い人の方が少しお得」になる傾向にはあると思います。

 例えば代表格の「JINS」の場合、店頭在庫レンズは「1.60~1.67非球面レンズ」のみになっています。つまり「1.74」になると、後日渡しになり、「当日すぐほしいから1.67で妥協する」というユーザーも現れる為、その点もまた戦略的とも言えます。

 「こちらで一番合うものを選びますね」と、ちゃんと適したものを選んでもらえるお店もあれば、基本的に低屈折を使用する方針のお店もあるようです。気になるようならレンズ決定の時に、屈折率とそれらの厚み差についても聞いておきましょう
 (もちろん聞いて判断する為には、お店に行く前にある程度勉強しておくことが必要ですよ)

C)「セパレート」タイプ

 フレームとレンズの代金は別々のメガネ屋さんです。
 フレームを選び、更にレンズを選ぶという作業がお客側に必要です。
 現在では基本的に少し高めになる傾向にあります。

 昔のメガネ屋さんは基本的にセパレートでの販売で、お客さんがフレームを決めた後、より良いレンズを販売に繋げるということが、ある種「メガネ販売員の腕の見せ所」と思われていました。今でもそういう所に自信を持って販売されている店員さんもいます。

 良いレンズをベースに勧められるお店もありますから、そういう場合には先に予算を知らせておく方がいいでしょう。

予算の伝え方

 予算をお店の人にストレートに伝えることは、決して失礼ではありません。かえって「勧めてもいいラインがわかりやすい」ので、どうしても「高いものを勧められるのが怖い」と思う場合には、いっそ予算を伝えるのも手です。

 その場合、「3万円予算」と伝えれば「3万2千円~3万5千円」くらいを勧められることが多いです。ですので本当に3万円予算がギリギリということなら、「くらい」ではなく、「2万5千円くらい」「3万円以上は出せない」という伝え方をしましょう。

どうしても譲れない部分も伝えておくとよい

 値段に関係があるのは「ブランド」「デザイン」「丈夫さ」「軽さ」「素材」「レンズ設計」で、特によく言われるのは「軽さ重視」「丈夫さが大事」あたりです。

 例えばブランドフレームの場合、デザイン料込なので同価格帯と比べて丈夫さ・軽さ・フィッティング力が下がってしまいますから、丈夫さを重視した場合のブランドフレームというのは、かなり微妙な選択であることが多いです。

 経験上では特に名指しで申し訳ないですけれども、アメリカ発祥の「レイバン」フレームは、調整できない部分が多かったりでどうしようもできずということがままありました。もちろん良い面もあるのですが……。

 逆に「好きなブランド」があるのなら、そこにこだわるのももちろん正解です。

 お金を出せば出すだけメガネのクオリティは上がります。
 しかしいくらお金を出しても、「壊れないメガネ」も「紙のように薄いレンズ」も、ありません。それは物理的に不可能です。
 自分がそのメガネを何年使うことになるのか、その数年にいくらを出せるのかから、ある程度予算を考えるといいと思います。(でもそれは洋服でも同じですね)

「レンズ入替」と「フレーム+レンズ購入」の違い

 客側にとっては「大事に使ってきたフレーム」でも、メガネ屋さん側にとっては「時間が経ったフレーム」なので、「レンズ入替」に対してはどうしてもリスクを考えます。

 レンズが新品になっても、フレームが数年使用の場合にはどうしても「フレームの方が先に壊れる可能性」があるからです。
 残念ながら「しょうがないなあ」で済ませてはくれないお客もいますから、「レンズ入替」はリスクの方が高いと捉え、基本的には受け付けないというお店もあります。

 レンズを入れ替える作業というのは、少し大げさな書き方ですがセルフレーム・メタルフレーム共に「少々の加工ダメージを与える」ものです。

 メガネは基本的に接着剤等でレンズを止めているものではありません。
 セルフレームは「ヤゲン」と言われるレンズ縁の山を、樹脂の「伸び」の性質により(温めたりしながら)リムの内側の溝に押し込んではめ込みます。
 経年劣化で樹脂は縮んでいく傾向にありますから、時に「小さくなり過ぎて」レンズが外れないこともあります。

 メタルフレームはリムについている小さなネジを外してレンズを入れ直し、再度ネジ止めします。
 ぶつけて曲がったフレームや、洗うのをサボってきたフレームは、曲がりや皮脂汚れなどのせいでネジが外れない場合もあります。

 そのような加工時リスクも考えると、メガネ屋さんは「自分の所の新しいフレームと新しいレンズを売ってリスクを減らしたい」となるのは、当然とも言えると思います。

 そのリスク面をペイする為、どこのお店でもどちらかというとレンズ交換の方が金額的に高めになる(割高感がある)傾向にあります。

屈折率の目安

  光をどれだけ曲げられるかという数値を「屈折率」と言います。

 基本的に高屈折率ほど価格が上がります
 しかし高屈折であればあるほど、透明度が下がり硬度が上がり比重が重くなる傾向にあります(店頭では黄色っぽく見えると説明されることもあります)。

 また高屈折素材になるほど、各波長にズレが生じたりもします。これを「色収差」と言います。
 つまり、屈折率を上げた値段の高いレンズであればあるほど「質が良くなる」というわけではないのです。

 現在流通しているプラスチックレンズの、素材と設計の組み合わせは概ね以下のようになります。

(より詳しい設計の説明は→「レンズの素材・設計について」)

  度数(±)
設計 屈折率 アッベ数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
球面
非球面
1.50 58                    
球面
非球面
1.55 38                    
球面
非球面
両面非球面
1.60 41                    
球面
非球面
両面非球面
1.67 31                    
非球面
両面非球面
1.70 31                    
非球面
両面非球面
1.74 33                    
非球面
両面非球面
1.76 30                    

※ 屈折率1.50~1.55のレンズでのあまり強い度数は作られていないメーカーさんもあります。

 青色枠は比較的オススメされる度数、黄色枠はあまりオススメできない度数です。
 これはあくまで目安程度で、フレームの種類(メタル/セル/ナイロール/ツーポイント等)お店の方針客側の好みなどでも変わってきます。

 例えば「-5.00のメタルフレーム」の場合、屈折率1.67を使う場合もあれば、1.60、1.70を使う場合もありますがどれも正しいです。

 高屈折のリスクと、強い度数の厚みの問題、そして金額の問題を、どの程度に捉えるかで答えは変わってくるからです。

 また同じ度数でセルフレームになった場合は、屈折率1.60で充分と判断することも多いです。これはセルフレームの方がリムが太く、レンズ厚があっても目立たず抱えられる為です。屈折率をひとつ上げると比重も上がるので重量面ではほぼ変わらないのです。

 よく「強度近視だけど1.74をお願いしたら渋られた」というような報告を見掛けますが、そういう人の場合「-4.00~-6.00あたりの近視」の人である可能性があると思います(本人はすごく強いと思い込んでいる)。
 上記の表では一応「屈折率1.74」の「-5.00」の欄から水色でよくオススメされると表してはいますが、どうしてもちょっとでも薄くしたいという希望が強い場合以外はまず使わないお店が多いと思います。

実店舗の現状

 有名チェーン店のみの例です。

B)「JINS(ジンズ)」「OWNDAYS(オンデーズ)」

 「非球面レンズ1.60~1.74まで」を概ね度数とフレームに合わせてお店側で選択されているようです。
 遠近レンズは別途料金のようです。

A)「Zoff(ゾフ)」

 「標準レンズ」は屈折率1.55の球面レンズで、非球面レンズや遠近両用には追加料金(5,000円~12,000円程度)がかかります。

A)「メガネの三城」

 フレームとレンズの料金は別々になっています。

A)「パリミキ(メガネの三城系)」

 「標準レンズ」は屈折率1.60の非球面レンズのようです。
 1.60より上の屈折率の非球面レンズや、遠近両用などには追加料金(3,000円~9,000円程度)がかかります。

B)「メガネの愛眼(aigan)」

 「非球面レンズ1.60~1.74まで」を、遠近レンズも含めて、概ね度数とフレームに合わせてお店側で選択されているようです、低価格コーナーは1.55球面レンズのようです。
 低価格コーナーを非球面レンズにするには追加料金が掛かるようです。

B)「眼鏡市場」

 遠近レンズも含めた「非球面レンズ1.60~1.74まで」を概ね度数とフレームに合わせてお店側で選択されているようです。

A)「ALOOK」

 眼鏡市場の「株式会社メガネトップ」が経営する店舗です。
 「標準レンズ」は1.55非球面レンズ、追加料金3,000円程度で屈折率1.60~1.74に変更ができるようです。

C)「メガネスーパー」

 一時は流れに追随して「Bタイプの追加料金なし」タイプで経営されていましたが、今は元に戻してフレームとレンズ別々になっています。

 

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